一人の女の生き様を描く「ハイヒールの男」
1.主演チャ・スンウォンの魅力
韓国版安田顕、あるいは15年後の東出昌大を想像させるチャ・スンウォンさんのお顔立ち。
男らしくて、骨ばっていて、背が高い色男の彼ですが、作中で演じるのは「女性になりたい」と願う警察官です。
彼の凄み、それはトランスジェンダーとして全く違和感がないこと。
視線、顔の向き、仕草、話し方、その全てに「女」が隠されていました。
韓国の俳優さんは演技が上手いという勝手な概念を持っていますが、この映画でも裏切られることはありませんでした。
2.韓国映画のハードアクション
韓国映画のアクションといえば、やたらグロテスクな表現が目立ちますが、この作品もところどころ目をそらしたくなるような残虐な表現があります。
しかしカメラのアングルやスロー映像を駆使した撮影など、非常に見やすいアクションで、「ん?今どうなったの?」というような混乱はないでしょう。
しかも超ハード。体格のいいチャ・スンウォンがよく映えます。
3.トランスジェンダーの苦悩が詰め込まれた作品
これが特に顕著に現れていたのは幼少期の回想シーンと居酒屋で仕事仲間と飲むシーンだったと思います。
クラスメイトからのいじめともとれるからかい、悪気のない仕事仲間の差別的ジョーク、「女装」をネタに悪ふざけする同僚。
トランスジェンダーの方なら共感できるであろう肩身の狭い経験を描いています。
性転換に関しても深く追求しており、主人公は全てをかけて性転換をするべきかどうか悩んでいます。
4.トランスジェンダーとして生きるための教訓
「手術するだけじゃ女にはなれない。心が完全に女になったら、手術すべきよ」
(女装して外へ出れば)変な目で見られるわ。それを感じて。強く感じるのよ。そして何も思わなくなったら……女になってるわ」
作中に登場するトランスジェンダーキャラのセリフです。
私自身、トランスジェンダーと単なるレズビアンの狭間で彷徨っているので、このセリフには強く感銘を受けました。
外へ出れば確かに変な目で見られることは少々あります。
まだ私はそれを何とも思話ないなんてできません。
まだ不安定に生きていることを痛感しました。
平気だと思っていても、意外に繊細な心を人間は持っています。
今一度自分と向き合うため、トランスジェンダーとして生きるためにぜひこの映画に触れて欲しいです。